相手目線を忘れたらスイッチチェンジはできない

アサーションを標榜する者にとって危険はマンネリに潜んでいます。
わずかな油断はアサーティブな態度を忘れさせ、日常の多忙の淵にWIN-WIN(ウィンウィン)の理想を埋もれさせるのは容易いことです。


日々の営業に慣れてくると、いつの間にかアサーションな営業の在り方や店が見えなくなっていることがあります。
こんなものだろう、これでいいと勝手に思い込んでしまうことが少なくありません。
そこまで思わなくても関心が目標達成に偏り、本来のあるべき姿を忘れてしまうことは多いものです。


しかし、目標達成にこだわるほど、基本を大切にして、あるべき姿の基準をあげて、よりアサーションな関係をめざしお客さまの信頼に応えられるようにするものです。


誰もが知っているように、お客さまの気持ちや視点を失うと、本当にお客さまに喜んでもらえる営業はできなくなります。


アサーションな関係を実現するためには、アサーティブな態度を大事にしたいものです。ですから、営業している人や店で勤める人なら、パート、アルバイトの人でも、お客さまの気持ちが分からないとは言ってはいけません。

分からないはずがないからです。なぜなら私たちは生活者です。毎日、お客さまに変わっています。いつでもすぐに変わることができます。
牛丼屋のお客さま、スーパーのお客さま、コンビ二のお客さま、病院のお客さま、いろんなお客さまになります。


「お客さまとしてどんな扱いを受けたか」という問題は、「人間としてどんな扱いを受けたか」と、同じ問題なのです。
だから、分からないと言うのは、率直、誠実。対等、自己責任を欠いた態度で、アサーティブではありません。


時にはアンケートやモニター調査で、お客さまの声を聞く必要もあります。
しかし、まず、自分の内側にあるアサーションな力に光を当てましょう。自分が自分の会社や店をお客さまとして体験してみてください。
誰もが利用したい、注文したい、任せたいと思うかどうか、お客さまとして体験してください。


お客さまの目線でオフィスや店を見渡す習慣を身につけてください。
明かりは適切か、空調はどうか、椅子から見える物は見やすいか、見えてはいけないものが見えていないか。安心と楽しさを妨害するものはないか、確認してみてください。
お客さまの椅子に座ってみるというだけで目線が変わり、気づくことも多いはずです。


そしてビデオやカメラにおさめて、もう一度見直してください。いかに自分のナマの視線で観た光景とレンズを通したものが違うかに気をつけてください。
人間の目では見えていない部分が、いかの多いかに気がつきます。観ているようでも一度でキャッチ出来る情報はわずかであることに驚くはずです。

この事実がすべてを語ります。分かっているようでも、実は分かっていないことが多すぎるという事実を思い知らされます。

それでも気がつかない人がたくさんいます。固定観念、こんなものだろうという思い込みが目を曇らせるのです。



ある店のことです。
なんともくすんだ感じの店がありました。
小売サービス業の印象から遠く離れて、「施設がある」という印象でした。
改装によって、以前と全く違う建物になりました。客数も大幅に増え活気がみなぎるようになりました。
ところが日に日に、客数は減り、活気も乏しくなり、以前と同じように「施設がある」という印象に変化していきました。どんどん改造前のくすんだ寒々とした印象に近づいていきました。
問題はなんでしょうか?同じ人が同じように頑張っているからです。その頑張り方は明らかに間違っている証明です。

彼は買い物に行かないと自慢気に言います。「男がそんなことできるか」と言わんばかりにです。お客さまのことは分からないと言いませんが、分かろうとしていないのです。食堂や居酒屋には行くし、ディズニーランドには何度もこどもさんを連れて行っています。彼にも学ぶ機会は普通にあるのです。

「ディズニーランドで感動しませんでしたか?」と尋ねると、「感動した」と反応します。おそらく「こんなもの」というモノの見方に終始しているのでしょう。
つまりディズニーランドは感動できる場所という思い込みがあり、自分の店を見る目は「こんなもの」という思い込みがある。早い話、自分の価値観で生きていないのです。
流行を追うことが他人の価値観を追いかけているように、思い込みで暮らすことも自分の価値観で生きていないのです。自分も相手も大事にしていない。
改造しても、改装しても、店がくすんでしまう理由が見えますね。


その一方で、逆のケースもあります。古い自宅兼店舗のクリーニング屋さん。おばさんがひとりで切り盛りしていますが、余計なものは置かずに、すべての什器備品がピカピカに光っています。どれも使い込んだ古いものばかりです。店に入った途端に元気になります。自分と相手を同じように大事にしている。人柄の良さを感じて、この人なら絶対の嘘はつかないだろうと無条件降伏です。



お客さま目線、つまり、相手目線で考えることに興味がないとは恐ろしいことです。
日々の営業に慣れてくると、いつの間にか自分の店が見えなくなっていることがあるとは、相手目線で考えないようになることです。
相手目線で考えるとは。マナーや礼儀、エチケット。相手にとって気持ちがいいかどうかの問題なのです。ここを落としてしまうと、店は店でなくなります。


「ビジネス・アサーション 男前プロジェクト」の中心にあるのは、スイッチチェンジです。つまりモノの見方はひとつでなく、いくつもある、いろんな角度から観てみよう。そこにWIN-WIN(ウィン・ウィン)の鍵がある。なぜWIN-WIN(ウィン・ウィン)の鍵があるかと言うと、可能性を閉じないからです。
それに比べて、「こんなものでしょう」というモノの見方は、アサーションな関係はもちろんのこと、あらゆる可能性を自ら拒絶する態度です。
相手目線を忘れたらスイッチチェンジはできなくなります。



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