アサーション権 2.他者と違う自分の価値観を大切にする権利

アサーション
2.他者と違う自分の価値観を大切にする権利


ひとはそれぞれに価値観が違います。そしてそれを認めてほしいと願うものです。それは言い方を変えると人と人に間にある境界の向こう側にいる自分を認めてほしいと言えます。人と人に間に境界があるから人間関係は特別な輝きを持ちます。境界のこちらと向こう側で頼みもしないのに自分の応援をしてくれたり心配をしてくれる。
ひととして無上の喜びの瞬間があるのは、わたしとあなたは違うという明確な境界があるからです。


境界がなければ、わたしととあなたの区別がなくなります。
たとえば恋愛はその究極と言えます。権力者がいかなる方法を持ってしても境界の向こうにある真摯な恋心は自由になりません。
境界は自由の砦とも言えるのです。それだけに良識と良心を磨きたいものです。


しかし、違う価値観の出会いは激突することも少なくありません。残業を求める上司、急いで帰宅したい部下というように、違う価値観の持ち主の組み合わせで状況は一変します。価値観の違いで終わるのではなく、互いの価値観を伝えながら接点を求める作業をします。伝えたいこと、伝えたい思い、それが互いに違うときに、コミュニケーションの出番です。


私たちは誰も他者の心を理解する能力など持ち合わせていません。本人でさせ判らない魑魅魍魎の世界を話せば判るなんて幻想です。ひとつひとつの単語の解釈もイメージも違う者同士が判り合うなんて至難の技です。

でも、だからこそ互いの違いを知り合うようにして、共感、共有できるものを探し合う作業を通じて、理解しあえないのを前提に、それでも尚、理解を求め合い価値観を再編成していくプロセスがコミュニケーションであり、そのプロセスに共鳴するのではないでしようか。
すばらしい出会いとはそういうことで、結果ではなくプロセスなのです。そのような経験を重ねるほど、価値観の違いを感じることは大きな楽しみになります。違いは新たな創造に発展します。


【ビジネスの現場からこんな意見が聴こえてきます。】

「説明しても分からない部下がいる。話をしても通じない。」よく聴くお話です。
こういう場合、まず相手の価値観を認めているかがポイントです。


どちらが先に認めるか・・・ということを気にする方がいるかも知れませんが、対等がルールですから、判っている側から積極的に認めてあげればいいのではないでしょうか。


思い込み、決めつけが先にあって、「正論を伝えても、それでは他者と違う自分の価値観を大切にする権利を認めていないからです。
まず相手の価値観を傾聴し、どこがどう違うのか、その理由はどこにあるのか、ひとつずつ障害を外していく作業が必要です。面倒くさいかも知れませんが、それをしておくと後々が楽なのでかえって時間の節約になります。



販売、営業は、価値観の違いを調整していく仕事といえます。全く違う価値観を持ったひとに、違う価値観をぶつけていくのですから、価値観が違うでは仕事になりません。
相手のメリットを伝えることなしにコミュニケーションは成り立ちません。
ただメリットを伝えるのではなく、心を動かさないとメリットになりません。
心が動いたことがメリットなのです。


社内・社外を問わず、心が動かない正論は正論でないと考えて、なにをどう伝えたら心が動くかを念頭にコミュニケーションを進めたいものです。
心を動かすツール、つまりコミュニケーション・スキルでいうツールとは、思考の6段階モデル(ブルーム博士)、PDCAPPM分析、マーケティング4P、5W1H・・・・をはじめとする世界中で使われ精査されてきた思考ツールです。
これらツールについては後ほど説明させていただきますが、思考ツールを使うスタートが.他者と違う自分の価値観を大切にする権利を遵守する心意気ではないでしょうか



■ ブルーム博士の思考の六段階モデル

①知識 … 暗記力(事実、言葉、やり方、分類を知っている)
②理解 … 内容を解釈したり、言い換えたり、説明したり、推し量ったりする能力
③応用 … 知識を一つの状況から別の状況に移すことができる能力
④分析 … 全体の中の部分を見つけたり、区別したりできる能力
⑤統合 … 部分を組み合わせて、統一された全体をつくりだせる能力
⑥評価 … 基準を使って情報の価値や使いみちを判断できる能力

出所:ベンジャミン・ブルーム「教育のねらい分類」